世界政府Google

「やっと書き終えたか。だるかったな。」
そう独り言をつぶやいて、椅子に座った状態で手と足を伸ばして、ぐっと背伸びをする。
やはり一仕事を終えた疲労が蓄積されているのか、見かけの年齢によらずボキバキと骨の音が軋む。
「モード、リラックス」そう一言告げた瞬間、部屋ががらりと印象を変えた。
壁面には星々が散らばり、斜め前には月から見た地球が投影されている。足元は月だ。
僕が好きなリラックスモードは月の上だ。どうも周りからは変わっていると言われるが、
何、皆の方がどうかしてる。地球上の自然なんかを並べても何も感動しないじゃないか。
などと思うのだが、人それぞれなのだからそれはどうでも良いことだ、といつもの結論を下し、
「さてと、飯にするかな」と席を立った。離席を確認したホームエージェントが今まで使用していた
思念接触型パネルを閉じ、電子ペーパーを広げていた作業場を壁面へと格納させた。


部屋を移動しながら今日の夜は何にするかと思案する。そうだな、しばらく作ってなかった親子丼にでもするか。
キッチンにはライトで照らされた下に、野菜や果物、肉、飲み物などが置かれていた。
なんでも、このライトの下では鮮度が落ちることがないらしい。仕組みはよく分からないが外界との繋がりを
遮断することでも出来ているのだろうか。積まれている中から必要な材料を取り出し、自分で刻んでいく。
もちろん、僕は好きで料理しているわけなんだけど、一般的な一人暮らし男性はホームエージェントが作る食事を取る。
疲れて料理をしたくないときなんかは僕も使うんだけどね。便利だし。
たまねぎを刻みながら、足でジェスチャーを送ることでTVをつける。


「ニュースです。
 本日、アメリカの第〜代大統領選挙が行われました。
 当選されたのは、ダニエル・フェイ・ジャックラウス氏です。
 氏はいまやアメリカ最大のEPI党に属しています。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


ああ、そういえば今日は大統領選挙だったか。すっかり忘れていたね。まぁエージェントが僕の思考に合わせて
投票しているはずだから、あんまり関係ないんだけども。少なくとも僕のような若い世代において、
EPI党以外の人間に入れる人ってのはそんなにいない。聞いた話では2割ぐらいらしい。それでも2割もいることに驚いたのだが。


〜回想〜
全世界を繋ぐ網がまだインターネットと呼ばれていた時代に、「ネットにこそ遍く人の智顕があるのだ」と
そう言って憚らない、当時の政治家としてはちょっとねじが外れていると思われていただろう人がEPI党の発足人だ。
開始当初こそ、ネットの威力を理解できない・したくない既得権益層が幅を利かせていたため、活動に苦しんだ。
しかし、年を追うごとにつれ、若干ずつではあるが若年層を中心に広がりを見せ始めた。その速度が一気に加速したのが、2020年。
かつてネット界の巨人であったGoogleと時を同じくして誕生した世代が権利を持つころに、Google副経営者がEPI党から出馬。
20代、30代から圧倒的な支持を得たがまだまだ顕在であった、既得権益層に跳ね除けられる。ただし、このことから、
GoogleがEPI党に出資していたことも広く知れ渡り、世界は本当に変わるかもしれないという夢を若者に埋め込んだ。
ここを皮切りにEPI党は年々と勢力を拡大し続け、後発の政党としても、既存の政党の中においても圧倒的な支持を獲得し、
アメリカ3大政党と呼ばれる地位まで上り詰めることとなった。
〜回想終わり〜


「あ、いけね。ちょっと煮つめ過ぎちゃったな。。。しゃーない」
炊き立てのご飯をどんぶりに装い、小鍋から具をうまくスライドさせ、半熟を維持して載せる。
よし、ここはうまくいったな。さっさと食べるか。。。






続く。。。かもしれない。(どっかのGoogle話にインスパイアされた)
※妄想製品は説明予定